煎茶とは
煎茶とは、日本の緑茶の1つで、露天で栽培された茶樹から摘採された新芽を蒸気で蒸し、揉みながら乾燥して伸び形の茶に仕立てたお茶のことです。
黄色がかった水色、さわやかな香り、甘味、渋味、苦味の程よいバランスを楽しむことができます。深蒸し茶と区別するために、もともと作られていた煎茶を普通煎茶、浅蒸し茶などと呼ぶことがあります。
以下では、煎茶の基本的な淹れ方を紹介しています。簡易版に続いて、詳細な情報を紹介していますのでご興味があればお読みください。
煎茶の淹れ方(3人分)
- BASIC INFO
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- 茶葉:6g
- 急須:200〜250mlの湯が入るもの
- 湯呑み茶碗:実質50〜60ml(容量約100ml)
- 湯量:250ml
- 湯温:70-80℃
- 浸出時間:40-50秒
煎茶を淹れる手順(3人分)
①湯温を調整する
お湯は、一度沸騰させたものを70-80℃に湯冷ましして使用します。 お湯は移し替えることで、湯温を約7〜8℃に下げることができます。
湯冷ましはどんな方法でも構いませんが以下が一例となります。
- 湯温の調整方法例
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- 沸騰させた湯をポットへ移す(約100℃ → 約90℃)
- ポットの湯を一度急須へ移す(約90℃ → 約83℃前後)
- 急須の湯を湯呑み茶碗へ(約83℃前後 → 75℃前後)
②茶葉を用意する
3人分で茶葉8gの茶葉を急須に入れます。(ティースプーン4杯)
③急須へお湯を注ぐ
湯冷ましした(湯呑茶碗の)お湯を茶葉の入った急須にゆっくり注ぎます。
④お茶を均等に注ぎ分ける
待ち時間(浸出時間)は、約40-50秒。 湯呑み茶碗へ注ぐ際は、一度に注ぎ切らずに、1つめの茶碗→2つ目→3つ目と注いだら、3→2→1と戻って、最後の一滴を注ぎきるまで繰り返します。(廻し注ぎ)
⑤二煎目を美味しく飲むために
二煎目を美味しく飲むために必ず最後の一滴まで注ぎきります。 お茶を注ぎきったら急須の中に蒸気がこもらないように蓋を少しずらしておきましょう。
⑥二煎目の淹れ方
二煎目は、一煎目より茶葉が開いているので、少し湯冷まししたお湯で一煎目より短い時間で淹れます。 浸出時間は一煎目の半分位。同じように廻し注ぎをし、それぞれの茶碗に注ぎ分けます。
⑥三煎目の淹れ方
三煎目は、二煎目よりもさらに高い温度の湯で、短い時間でさっぱりとした味を楽しみます。
二煎目以降の淹れ方のヒント「温度とおく時間の組み合わせで調整をとる」
使用するお茶により、味と香りが異なりますので一煎目を淹れて飲んでみて、二煎目以降の調整をとること美味しく淹れるポイントとなります。 以下のことを試してみることをおすすめします。
- 二煎目以降の淹れ方のヒント
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- 二煎目で「香り」を強くしたければ、使用する湯の温度を上げ、「うま味」を出したければ、温度を下げます。
- 一煎目のお茶が渋いと感じたら渋ければ、待つ時間を短く、薄いと感じたら待つ時間を長くします。
以上が簡単な煎茶の淹れ方の紹介となります。以降ではさらに詳しく煎茶の淹れ方を、煎茶の特徴と共に説明しています。
さらに詳しい煎茶の淹れ方
美味しいお茶を淹れるには、茶の種類に合った、茶の量、湯の量、湯の温度、浸出時間の目安を知っておくことが大切となります。
茶の量、湯の量、湯の温度、浸出時間の目安は、お茶の種類によって異なります。それぞれのお茶の特性を知り、そのお茶にあった淹れ方をマスターするようにしましょう。
- お茶を淹れる際の大切なポイント
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- ①茶の量
- ②湯の量
- ③湯の温度
- ④浸出時間
これらは4つのポイント調節することで、1種類のお茶からも様々な個性を引き出すことができます。 まずは基本の淹れ方を試して、後は自分の好みに合うように調整してみることが自分にあったお茶の淹れ方をマスターするポイントになります。
香りと味のバランスをつかむ
日本茶の美味しさを決める要素に香りと味の成分があります。 香りの成分は、温度の高いお湯で淹れるほど強く出ます。一方、味の成分には、二つの成分が関与しています。
一つめは、カテキンで、タンニンとも呼ばれますが、苦渋味を感じさせる成分です。 二つめはアミノ酸類でうま味や甘味を感じさせる成分です。
カテキンは、お湯の温度が80℃以上でよく溶け出します。アミノ酸類は低温でも比較的溶け出します。 この苦渋味とうま味の二つのバランスが、煎茶の味を決める大きな要素になります。
- 茶の味に関係する主要な成分
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苦渋味成分「カテキン類(タンニン)」
80度以上の熱湯ですとたくさん浸出するが、温度が下がるにつれて浸出の割合はどんどん少なくなっていく。うま味や甘味成分「アミノ酸類」
どんな温度のお湯に(低温でも)でも同じくらい浸出する
例えば、80℃以上の熱いお湯で淹れたお茶はカテキンがたくさん溶け出して苦渋味の強いお茶になり、60℃位の低い温度のお湯で淹れると、アミノ酸のうま味と甘味を感じされるお茶になります。
このため、一般的に旨み成分を豊富に含む上級茶は比較的低温の湯でゆっくり時間をかけて、旨み成分をそこまで多く含まない並級(下級)茶は高温の湯で短い時間で淹れ清涼感を楽しむことがよいとされています。
このように、お茶を淹れる時のお湯の温度がとても大切なポイントの1つとなっています。以上のことを踏まえて、①茶の量、②湯の量、③湯の温度、④浸出時間について紹介していきます。
①茶の量
急須で煎茶を淹れる場合、1人分約2〜3gが基本です。茶匙で計ると、軽い山盛りで約2g、山盛りで約3gになります。ただし、1人分を淹れる時は少し多めに4〜5g位あると二煎目も美味しく淹れられます。
- 【茶葉:6g(3人分)】
②湯の量
後ほど詳しく方法を紹介しますが、湯の量を量る際に、湯呑み茶碗を使用すると①湯量が量れる、②湯温が調整できる、③茶碗が温まるなどの利点があります。
使用する湯量が分かっていると、急須に湯が残ってしまったり、逆に足りなかったりする心配をする必要がなくなります。
- 【湯量250ml】
- 【湯呑み茶碗:実質50〜60ml(容量約100ml)】
③湯の温度
湯の温度は、湯呑み茶碗などを使用して湯冷ましをすることができます。※湯はかならず一度沸騰させてから使用するようにします。
季節、器の材質や大きさ・容量などによって多少の違いはありますが、器に移すごとに7〜8℃下がります。湯温の調整については以下の方法を参考にしてください。
使用するお湯の温度を調整する方法について
ひとつの容器から別の容器へお湯が移動するたびに、お湯の温度は5〜10℃ずつ下がります。例えば、75℃前後の湯に調整するには、以下の方法があります。
- ①沸騰させた湯をポットへ移す(100℃ → 約90℃)
- ②ポットの湯を一度急須へ移す(約90℃ → 約83℃前後)
- ③急須の湯を湯呑み茶碗へ(約83℃前後 → 75℃前後)
- ※さらに低い温度で淹れたい場合は、もう1度同作業を繰り返します。
④浸出時間
緑茶の一種である煎茶は、製造の過程で茶葉を揉む作業を行なっており、そのために茶葉が細く撚られています。
茶の成分をしっかりと出すためには、茶葉を湯に浸すことで撚りを戻す必要があります。 茶の種類や好みにもよりますが、今回はお茶の浸出時間40-50秒を目安としています。
以上の数値を目安に、煎茶の淹れ方の手順を説明していきます。
- BASIC INFO
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- 茶葉:6g
- 急須:200〜250mlの湯が入るもの
- 湯呑み茶碗:実質50〜60ml(容量約100ml)
- 湯量:250ml
- 湯温:70-80℃
- 浸出時間:40-50秒
①湯温を調整する
先ず、①ポットのお湯をこれから使用する急須へ注ぎます。ポットの湯は必ず沸騰させたものを使用します。
そして、②急須の入った湯を湯呑み茶碗3客へ8分目まで注ぎます。この時、湯の温度は75℃前後となっています。※沸騰した湯(100℃)→ポット(90℃前後)→急須(83℃前後)→茶碗(75℃前後)
②茶葉を用意する
次に、お茶の葉の分量を計って急須に入れます。今回は3人分で6gとしており、ティースプーンであれば3杯分となります。
③急須へお湯を注ぐ
用意したお茶の葉を急須に入れ、その後に適温にした湯を急須に注ぎます。 急須の蓋をして40-50秒間浸出します。できるだけ時計などを使い正確に計ることをおすすめします。
④お茶を均等に注ぎ分ける
時間が経ったら、湯呑み茶碗へ注ぎ分けます。湯呑み茶碗へ注ぐ際は、一度に注ぎ切らずに「廻し注ぎ」という方法でお茶を注ぎます。
- 「廻し注ぎ」とは
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茶碗を一つずつ満たしていくと、最初の茶碗は薄いお茶、最後の茶碗は濃いお茶になってしまいます。これを防ぎ、各茶碗のお茶の量と濃度が均等になるように、何回かに分けて注ぐ方法を「廻し注ぎ」といいます。
具体的には湯呑み茶碗を1→2→3と注いだら3→2→1と戻ります。何度かこれを繰り返し、最後の一滴まで注ぎ切ります。
お茶を美味しく淹れるためには、最後の一滴までしっかり注ぐことがとても大切であり、二煎目、三煎目とおいしく淹れて行く際にもとても重要となります。(※急須の中にお湯が残っていると、二煎目を淹れるまでの間にお茶の成分が出続けて苦渋くなってしまうため)
最後の一滴まで注ぎきったら、急須の後ろ(注ぎ口の反対)を手の平でポンとたたいて、急須の注ぎ口の網についている茶を急須の真ん中に戻します。
⑤二煎目を美味しく飲むために
そして最後に蓋を少しずらしておき、急須の中に蒸気がこもらないようにしておきます。このようにすることで茶葉が蒸れずに、二煎目も美味しく淹れることができます。
⑥二煎目の淹れ方
二煎目を淹れる時は、一煎目のようにお茶の葉がお湯を吸わないので、一煎目の時に覚えた湯量より、やや少なめのお湯を少し湯冷まししてから使用します。
すでに茶は開いているため、浸出時間は一煎目の半分位とします。同じように廻し注ぎをし、それぞれの茶碗に注ぎ分けます。
三煎目を淹れる時は、二煎目よりもさらに高い温度で、浸出時間は二煎目の半分とします。
自分自身の好みの淹れ方をみつけよう
お茶は、亜熱帯原産の常緑植物で、今日では概ね北緯45度から南緯45度にわたる世界各地で広く栽培されており、日本でも北は青森から南は沖縄まで全国で広くお茶の栽培が行われています。
日本で作られるお茶は、各産地や品種の違いにより、お茶の特徴が異なり、香りや味は変わってきます。 お茶を淹れる際は、それらお茶の特徴を理解しながら、淹れるお湯の温度や、浸出時間を調整することがとても大切なポイントとなります。
香りを楽しみたいとき、うま味を堪能したい時など、その時の気分やシーンに合わせて、淹れ方を変えることができるのもお茶の楽しみ方のひとつです。
まずは、基本的な淹れ方を試しながら、ご自身の好みのお茶の淹れ方を見つけることが美味しいお茶を淹れるコツとなります。
これから紹介する情報を元に「ご自身の好みの淹れ方」を見つけてみてください。